第20回 関西高校模擬国連大会
2010年6月24日(木)~26日(土)、第20回 関西高校模擬国連大会を国立京都国際会館で開催いたしました。11校から約200名の高校生らが参加し、国際連合総会としての2つのコミッションに分かれ、コミッションAでは46ヵ国、コミッションBでは41ヵ国の国連代表に扮して、「Water for Life(命のための水)」について討議しました。今年は、洗足学園中学高等学校(神奈川)の皆様を、新しくお迎えしました。会議は、京都外大西高等学校の生徒と教員の主導で行われました。
開会式は、国立京都国際会館館長 天江 喜七郎氏、日本国際連合協会 京都本部 理事長 須藤 眞志氏、京都外国語大学 国際交流部長 熊谷 俊樹氏、日本国際連合協会 京都本部 事務局長 和田 和子氏のご臨席の下、関西高校模擬国連大会 実行委員長 北村 聡氏(京都外大西高等学校 校長)の挨拶から始まり、滞りなく行われました。また、ご来賓として、日本国際連合協会 京都本部 本部長 大谷 光真氏、大阪-神戸アメリカ総領事館 総領事 エドワード・ドン氏、外務省 大阪分室長 浅野 尚未氏にご出席いただき、国際社会の第一線で活躍されておられるご経験から、それぞれの方に大変貴重なスピーチをいただきました。
また今回は大会の20周年を記念し、日本ユニセフ協会大使 アグネス・チャン氏(歌手・エッセイスト・教育学博士ph.D)に基調講演をしていただきました。演題は『Born in blue world (水の惑星に生まれて)』でした。チャン氏は、幼少時を過ごした香港での水不足の体験談や、日本ユニセフ大使としてエチオピアやスーダン、ブルキナ・ファソなどのアフリカやアジア諸国を訪問したこと、また、紛争や社会の混乱、環境破壊によって絶望的な条件のもとで生きる数百万の人々の状況などを、細かく話して下さいました。ご講演の最後には、帰京のご予定があるにもかかわらず、参加生徒とともに快く記念写真を撮ってくださいました。
アグネス・チャン(AGNES CHAN)
歌手・エッセイスト・教育学博士[Ph.D]
香港生まれ。1972年「ひなげしの花」で日本デビュー。一躍、アグネス・ブームを起こす。上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学(社会児童心理学)を卒業。'84年国際青年年記念平和論文で特別賞を受賞。'85年北京首都体育館チャリティーコンサートの後、エチオピアの飢餓地帯を取材、その後、芸能活動のみでなく、ボランティア活動、文化活動にも積極的に参加する。'89年、米国スタンフォード大学教育学部博士課程に留学。'94年教育学博士号(Ph.D)取得。'98年、日本ユニセフ協会大使に就任。以来、タイ、スーダン、東西ティモール、フィリピン、カンボジア、イラク、モルドバ共和国と視察を続け、その現状を広くマスコミにアピールする。
2000年には本格的に歌手活動を再開、シングル「この身がちぎれるほどに」は20万枚のヒットを記録。2005年には「ペスタロッチー教育賞」を受賞。2006年「Forget Yourself」で全米歌手デビュー。2007年にはポップス歌手としては世界初となる、北京人民大会堂でのリサイタルを行う。2008年、全国112ヶ所に及ぶコンサートツアー「世界へとどけ平和への歌声」を成功させ、第50回日本レコード大賞の特別賞を受賞。
現在は、芸能活動ばかりでなく、エッセイスト、目白大学教授(客員)、日本ユニセフ協会大使、日本対がん協会「ほほえみ大使」など、知性派タレント、文化人として世界を舞台に幅広く活躍している。
決議案
大会では、各国大使に扮した生徒たちは、5つのセッションを通して、自分が割り当てられた国の視点から、スピーチを準備し、議題についてディベートし、決議案を作成しました。今回は各コミッションで3つずつの決議案が作成されました。生徒たちは、また、アフリカ、アジア、ラテン・アメリカとカリブ海諸国、ヨーロッパとその他の地域に分かれた地域ブロック会議でも、方針や地域としての意見をまとめるために話し合いをしました。決議案も地域ブロックで準備され、各コミッションに紹介されました。
決議案が可決されるためには、3分の2以上の賛成票が必要です。修正点について十分議論した結果、コミッションAでは初日にトピック1「衛生」について、2日目にトピック2「ジェンダーと衛生施設」についての決議案が採択されました。しかし、3日目のトピック3「アクセスと手ごろな価格」についての決議案は否決されました。コミッションBではすべての決議案が採択されました。決議案の主な内容は以下の通りです。
トピック1「衛生について」
- すべての先進国が、GDPの0.7%以上か、それに等しいだけのODAを提供するという公約を果たす。
- すべての開発途上国が、小学校に衛生教育プログラムを導入することを奨励する。
- 先進国が、上記のような、ODAと特別なボランティアや専門家を含むプログラムに資金提供することを求める。
- すべての開発途上国が、地域レベルで、男女同数の指導的立場を持つ衛生管理委員会をつくることを奨励する。
トピック2「ジェンダーと衛生施設について」
- 安全な水に適切な接近ができない開発途上国に、直ちに安全な井戸を建設することを求める。
- 性差別を解消するような衛生施設を設計するための、地域の委員会を、開発途上国につくることを求める。
- 政府にもっと女性の指導者を、特に水問題や衛生施設に関連する役職に、おくことを求める。
- 男女平等のより良い衛生施設を設計する地域委員会を国連が支援することを求める。
トピック3「アクセスと手ごろな価格について」
- すべての加盟国が、2015年までに、1日1人当たり最低20リットルのきれいで安全な水を提供することに同意することを求める。
- 国内の水道会社が、地域の水の管理に地域の人々をもっと参加させることを薦める。
- 私企業と政府が、すべての市民に安全で安価な水を提供できるように協働することを薦める。
閉会式、大会が終わって
閉会式では、関西高校模擬国連大会 副実行委員長のアンガス・マグレガー教諭(京都外大西高等学校)より、各校の生徒代表に「修了証」が授与されました。
大会期間中は、議長や秘書官(いずれも京都外大西高等学校 国際文化コース3年生)、地域ブロック・リーダーの生徒たちはもちろん、ページ(メッセンジャー)の役割を担った1・2年生も各自がまじめにその責任を果たし、特に、大会最終日は土曜日であったにもかかわらず、多くの1・2年生がボランティアとして手伝いに来てくれました。
大会が終わっても、生徒たちは、この大会で成果を出すことがいかに困難であったかを未だに話していますが、同時に、いかに「楽しかった」か、ということについても話が絶えません。様々な学校から多くの生徒が3日間参加し、国立京都国際会館で大会の形式を皆で経験できたことを、とても楽しんだようです。大会に携わった京都外大西高校の教員も、生徒たちが自信を持って人前で話したりディベートで意見を述べることができるようになったと、その成長ぶりについて話してくれます。他校の引率の先生方からは、今年のディベートは大変アカデミックで、今までの中で一番良かった、という評価もいただきました。参加した生徒の皆さんが、今回の「命のための水」という議題を通してこの問題にこれからも関心をもち、将来少しでも国連のミレニアム開発目標達成を積極的に支援しようという態度を育む機会にしていただければ幸いです。
また今回は、関西高校模擬国連大会事務局ホームページの開設をはじめ、積極的な広報活動を行ってきた甲斐もあり、例年に比べ来場者・見学者数も倍増し、その意味でも、大会は20周年記念にふさわしい、大きな成功をおさめたと言えます。これもひとえに、関係者の皆様が、貴重な時間と労力を大会の成功のために費やして下さった成果であり、運営する立場の者といたしましては感謝にたえません。今後も、この「英語による模擬国連」という教育プログラムを通じ、参加する生徒の皆さんが単に英語の運用能力を向上させるだけではなく、何かしら地球市民として大切なことに“気づく”学習の場であり続けてほしいと、願って止みません。
本当に、多くのご支援、ご協力を賜り、誠にありがとうございました。
大会の様子
授業でアフリカ料理にチャレンジ
アフリカ諸国を担当した3年ICB組の生徒が授業でアフリカの食べ物作りにチャレンジしました。